2011/06/01

スズメ

 京都府立大学は、京都府立植物園に隣接し、すぐ横には鴨川や糺の森、少し行くと北山山系があることから、緑も多く、大都市の中でも豊かな環境を保っています。そういった環境も手伝って、この大学構内には、季節ごとに数多くの鳥が飛来し、種類によっては繁殖している個体も多くみられます。その中で、最も多く繁殖をしているのがスズメ(Passer montanus)です。
 大学構内や隣接する鴨川には、この時期、巣立ったばかりのスズメが多くみられます。大学構内で巣をつくり、繁殖している個体も数多くみられ、もちろん北大路界隈の町家で育ったスズメたちも多く見られるのです。人の近くに生息する私たちにとってとても身近な鳥類です。
 大学構内では、図書館の建物の軒先に巣を作っています。軒先のひさしにナイロン系の網をかけているのですが、その間をうまく利用し、巣を作っているのです。ここでの巣の位置状態は、軒先であるため雨が入りづらく、風が吹いても落ちないように建築されていて、なかなか良くできていて感心します。

 スズメは、私たちの身の回りにいる鳥類でありながら、寿命などの詳しい生態調査はあまりされていません。徐々に減少しているとも言われていますが、スズメたちの生態自体、詳細な調査がまだそんなにもされていないことから、これからの研究が進んでいくことになるのでしょう。
 スズメと生活を共にしてきたかつての日本の環境を考えてみると、たくさんの変化が見えてきそうです。町でも中山間地域でも同じですが、かつて隙間の多い日本の建築が、機密性が高い建築へ変わり、戸建てが多かったのが大型の集合住宅へ変化してきています。また、日本人の食生活も大きく変わってきていることも、影響があるのではないかと思えます。

 ただし、鳥の調査をしていく中で、少し思うのは、彼ら彼女たちは、私たちの変化しつつある生活環境に対して、うまく合わせて生活を変えてきているのではないかと思えることがあるのです。スズメだけではなく、それ以外の今まで都市などにはいないと言われてきた鳥たちが、今は普通に見られる種類も出てきつつあるのです。生き物は、ある意味戦略的な生活を送ります。対応できるかできないかでその生活の基盤が問題になるからです。これからの研究では、そういった点も注視して進めていければと思っています。
給餌してもらっているスズメ
子供のスズメ