2023/12/31

虎ノ門ヒルズの利用空間

 虎ノ門ヒルズでは,写真の様にブランケットの使用が無料で出来るようです。使ったら元に戻すのは当たり前ですが,無料で利用できるのは,肌寒い時に重宝しそうです。こういった取り組みは,もちろんしっかり管理されている敷地内だからこそで,日々管理をしているからだと言えますし,ヒルズを仕事で利用している人にとっては,良いサービスの一つだなと感じました。メンテナンス費用は掛かると思いますが,それよりもビルで働く人たちへの「目に見えないもの」,例えば,心身の向上などにも,こういったアイテムがあるだけで変わっていくものだと思います。あくまで「ブランケット」というものであるのですが,それを自由にこの緑の芝の空間で使っていいとなると,気持ちも向上します。緑の使い方は見るだけではなく,利用する事も大事と思われるのです。

 皆さんはどう思いますでしょうか。こういった取り組みが身近にある事を考えてみると,緑との付き合い方がまた変わって見えてくるかもしれません。

take free だそうです


2023/11/26

阪神百貨店の屋上緑化

  大阪梅田の阪神百貨店の屋上には,緑化された空間があります。屋上緑化です。実は,この緑化は,屋上に加えて壁面にも緑化され,一つの空間を形作っています。特に,壁面は六甲山系の山並み,スカイラインをデザインした緑化空間でもあり,夜見て頂くとライティングが美しく映えます。(この屋上緑化については,兵庫県立大学の大藪崇司先生がコラムを載せています。緑の在り方や経緯など詳しく書いていますので,詳細はそちらをご覧ください)

 さて,この阪神百貨店の屋上緑化の一つの意義は,緑のパッチを作り出したことにあると思います。この緑化のパッチの前にはグランフロント大阪の緑の空間もあり,今後出来上がっていくうめきた二期工事のグラングリーン大阪の緑の空間が出来れば,その相乗効果として鳥などの生き物の移動できる空間が出来そうです。緑のコリドー(回廊)が出来れば,鳥たちもさらに移動しやすくなるかもしれません。実際,本研究室のゼミ生によるグランフロント大坂での鳥類調査の結果でも,ある程度のポテンシャルを持っているのが分かっています。そういったことからも,この阪神百貨店の緑のパッチは,その追い風になる可能性は高いと言えましょう。もちろん,生態系ディスサービスといった負の面も,もしかしたら出てくるかもしれませんが,それを超える生態系サービスが得られる可能性の方が高いと思われるので,この緑化空間の存在は都市に住まう,利用する人にとっても良いものと言えるのではないでしょうか。

 昨今の大都市圏における緑化の在り方は,平成の最初の頃に比べると,視点や意識が大きく変わってきています。実は,鳥の生息環境にとっても大きく変化していることから,その生息域の違いもこの都市の緑化によって大きく変動すると思われます。これからも都市域の鳥を見つめることで,新たな緑の在り方,使い方も見いだせられるのではないかと思うところです。

緑が多い空間です

2023/10/21

虎ノ門ヒルズでの緑化

 訪れて,視覚的にも緑が多いと感じました。住んで居た時から感じていましたが,東京は緑が視覚的に多い街です。起伏のある地形であること,坂があって,その上下に緑が見られたりすることでの視覚的な緑の多さに感じるところです。ここ虎ノ門ヒルズ横の愛宕一丁目緑地からレジデンスタワー側を見ると,緑の階層が見て取れます。カスケード(滝)も見られ,ここで働く人の休む事のできる場を提供しているようです。緑の階層,重層がボリューム感を出しています。こういった緑の活用は,飛来する鳥類にとっても休息できる場を提供してくれそうです。特に,横に隣接している愛宕山,愛宕神社からの緑の動線は,緑のコリドー(回廊)としてこの麻布台ヒルズへ繋がっていることから,鳥類の生息の場としても重要な役割を示すのではないでしょか。東京か近辺に勤務していたら,是非この場の定期的な鳥類の調査をしてみたい・・・と思う次第です。たぶん,モニタリングをしていくと面白い結果になるのではないだろうかと思います。東京勤務の元学生と相談して調査をしていきたいところです。

 最近できた麻布台ヒルズも同様ですが,こういった緑の植栽,活用はその後の管理も重要ですが,資本の大きな企業による構成であることは,継続維持が期待でき,都市の魅力を上げていく要素になるのではないかと感じています。

愛宕神社の鳥居

緑の重層化


2023/09/24

夙川の風景と架橋

 大手前大学での集中講義の後に夙川の親水空間の場所を通りました。まだ残暑が残り暑い中,緑が豊かに見られます。JRの架橋が見られ,その向こうに絵を描いている人を見かけました。絵に描きたくなる夙川の光景なのでしょうね。川にはカワムツの泳いでいるのが確認できました。



2023/08/23

淡路生田の棚田

 兵庫県淡路市にある生田の棚田の風景です。大学のフィールド演習でこの場所へ毎年の様に来ています。ちょうど夏季休暇の時期の集中演習になります。毎年ですが,運よく天候に恵まれています。とはいえ,暑さは流石に厳しいものがあります。8月の終わりの光景ですので稲穂が徐々に色づき始めている状態で,秋になれば美しい収穫の色の光景が見られます。

 田の風景は,日本の代表的な景の一つですし,そのあとの収穫といった農家の方にとってはとても大切なことも控えています。この時期,だんだん暑さもひくはずではあるのですが,昨今の暑さは9月に入っても余り変わらず,稲の生育にも気になるところです。そうなるとこの風景はどうなるのでしょうか。

快晴です


2023/07/28

看板

 大津市の京阪電車の踏切を渡ろうとしたときに目に飛び込んできた「旅館」の文字。通る電車に分かるように書いてあります。旅館名は無くただ「旅館」と書いています。何だか主張の潔さを感じます。この大きな壁いっぱいの文字を見て,昭和の中頃の風景を感じました。周辺の空間もなんだか懐かしいような街並みで,踏切の光景も懐かしい雰囲気を醸し出しています。夕焼けが似合いそうです。こういった風景は,私が子供時代だった昭和50年代ごろ,普通にあった空間でしたが,平成に入り,バブルを経験し,景気も下がり,そして令和に至る過程の中で,どんどんなくなってきた感じを受けます。

 風景は,一長一短で完成するものではありません。街ですと,そこに住まう人たちや訪れる人たちによって形作られていきます。そういった時間をかけて出来た街が私は好きです。皆さんはどうでしょうか。新しく出来上がった街も,もちろん楽しそうですが,時間をかけて作られて,知らない間に気が付くと出来上がっていた街は,そこにあって普通に感じられますので,それはそれで面白いとは思いませんか。

 文字で表現するのは,私にとってとても難しいですが,写真はその光景を視覚で話してくれそうです。これからも周りを見渡して良い風景を見つけて行ければと思います。

看板大きい


2023/07/16

上高地の田代湿地

 上高地の田代湿地は,とても魅力的です。植物を見るのも,景観そのものを見るのも,どちらも魅力があります。以前来た時は,雨降りの中でしたが,今回はたまたま天気も良く,穂高連峰も美しく見ることができました。足元の方での湿地にはイチョウバイカモ(Ranunculus nipponicus Nakai var. nipponicus)が見られ,ゼンテイカ,いわゆるニッコウキスゲ(Hemerocallis middendorffii Trautv. et C.A.Mey. var. esculenta (Koidz.) Ohwi (1949))も咲いており,すがすがしい高原の空気と透明感のある光と風と,最近は山にも登れていませんでしたので,この光景を見られただけでも満足できました。美しい景観は,やはりずっと残って欲しいものです。

穂高連峰と田代湿原です

2023/07/01

淀川での鳥類調査

 淀川河川敷は干潟もあり,大阪といった大都市の生物多様性にとって貴重な空間と言えます。現在,ゼミ生が淀川での鳥類の調査を進めています。この淀川は大阪,京阪神にとって大切な流域でもあり,また大阪の中心部を流れているといったことからも,緑の軸にもなっていますし,これから大阪のうめきたでの緑の創出との相乗効果も見られるかもしれません。

 大阪のこのような「場」は,生き物だけではなく都市の「景観」としても面白いものです。この河川敷の吉原の対岸,向こう側には高層ビルディングが立ち並ぶ景観は,この吉原が緑のアクセントとなって,街の景観を作り出してくれています。こういった光景は何も大阪だけではなく,私が以前住んでいた東京でも近所にあった荒川も同じような光景を見て,都市の景観は色々と魅力的なものが見られるなと感じました。そういった都市の河川景観を見ることで,東と西で場所は違いますが,何かしら同じような景色を見ているような気もしてきますので,不思議です。

 また,河川での生き物に目を転じてみると,様々な鳥類を始め,甲殻類,貝類,昆虫類などが多くみられます。淀川河川敷に置いての生物多様性を垣間見られるようです。大阪市における緑の軸の一つに選んでいるのは,正しいと感じられるものですし,私たちにとって大切な緑の環境だと改めて思うところです。

吉原の草原のようです


2023/06/23

淀川河川敷のオオヨシキリ

 淀川河川敷にはこの時期,朝からオオヨシキリ(Acrocephalus orientalis (Temminck & Schlegel, 1847))の大合唱です。早朝から院生の調査指導に行った際,河川敷に到着すると大合唱的な感じで迎えて?くれます。大阪での夏の風物詩であるクマゼミの大卯合唱ほどではありませんが,それでもこんなに四方八方で鳴いている様は,個体数の多さでしょうか。多くの人が散歩や運動で行き来するこの河川敷の横ではオオヨシキリが鳴いている。なんとも不思議な光景ですが,それがこの淀川の生き物の生息が出来る空間を担保しているとも考えられますし,上手くこの緑地空間を残しているとも言えます。

 オオヨシキリの観察をしたい人もいるかもしれません。阪急十三駅から少し歩いて,朝方にこの河川敷に来てみて下さい。オオヨシキリの声や姿に出会えると思います。

オオヨシキリです


2023/06/15

京都府立植物園の鵜

 京都府立植物園には,毎日ではありませんが,カワウ(Phalacrocorax carbo Linnaeus, 1758)が飛来しています。滋賀の琵琶湖から飛来しているといったことも報告がありますので,それなりに長距離で飛来してきています。昔は京都市内でも余り見かけなかったといわれていた鳥だったそうですが,今では普通に賀茂川にもよく見かけます。どうしてそうなったのでしょうか。鳥の生息環境は,環境によって大きく変わってきます。いま私たちが見かけている鳥類も,知らない間に見かけなくなったり,気が付くと知らない間に見かけるようになったりと,そういった鳥が結構あります。それは環境が良くなったからでしょうか。環境の変化によって左右されている部分はあります。加えて,ごはん(餌)がある(ない),天敵がいる(いない),夏鳥や留鳥なら繁殖の場所がある(ない),危険な環境である(ない)などといったことが積み重なっての生息環境です。

 私たちの今いる環境は,私たちにとって良い環境なのか,それが鳥たちにとっても良い環境なのか,改めて考えてみる必要はあるでしょう。このカワウ君,人を見ても,あまり逃げるそぶりはなく悠々としています。ですので,此方も脅かさないで,少し離れての観察です。中々,精悍な顔つきをしていますね。

此方を見るカワウ


2023/06/12

西賀茂での鳥類調査

 現在,研究室のゼミ生が鳥類の調査をしています。調査の場所は,京都の生産緑地の農地を中心に進めているところです。ちょうど鳥類の繁殖期にあたるこの時期には,夏鳥も飛来していますし,様々な鳥類が活発に行動している時期になるのです。ただ,ここ西賀茂界隈では,期待していた夏鳥は,少なく,とはいえ,ツバメが多く確認出来る感じですので,初夏から夏の光景を目にすることが出来ています。そのほかの鳥類を見ると,確認の多くは都市型の鳥類調査になっている感じです。

 京都市は街の真ん中の商業地域が中心に動いているように思えるのですが,ここの西賀茂や岩倉をはじめ,少し移動すると京野菜などを栽培されている場所が多くあり,農地と住宅が近しい間柄になっていると思います。私の地元神戸でも郊外に行けば豊かな田畑がありますが,京都の様に近接した感じではありません。すぐ近くに田や畑がある環境は,地区,地域の生物多様性にも大きく貢献しています。また,京都の人にとっても,この生産の場,空間を大切にしているからこそ,他の都市の様に都市スプロールによる変化が少ない(洛西ニュータウンや桂の空間は,大きな変化になっていると思いますが・・・)と言えるのかもしれません。

 地産地消もあることから,農産物の移動も地元消費で,それなりにあると思われます。実際,私の家でも西賀茂産野菜を週に3回ほど持ってきてもらっているぐらいですし,周辺のおうちでも幾人かの農家さんが,移動販売をしている光景をよく見るからです。これは京都らしい情景なのだろうと思いますし,農地の維持にとても役立っているのではないかと思うところです。こういった環境が今後も維持して欲しいと願いつつ,今この時点での生き物の状況はどうだろうかと思ったゼミ生が,鳥の調査を進めています。京都市にとっての生物多様性の在り方を探る大きな調査かと思うところです。

調査中です


2023/05/12

南禅寺での水路閣

 南禅寺境内には,煉瓦と花崗岩で作られているアーチ形の橋脚の疎水の道があります。以前,ゼミ生の鳥類調査の中で疎水を中心に調べたことがありました。そのゼミ生は鳥類調査でのフィールドとして疎水を対象にしましたので,疎水の箇所を可能な限り調査した結果から,彼は博士論文へとりまとめました。その折,何度か調査指導に行きましたが,それもだいぶと前です。その後,何度もこの場所には庭園見学も含め,ここには来るのですが,何度見てもこの水路閣の存在はどっしりとして,時間の経過を余り主張していないと感じます。そういえば,子供の頃(昭和50年代)に来たときとも同じ状況だった気がしますので,ほぼ変化のない景観なのでしょう。変わっていくのは植物の状況ぐらいでしょうか。

 ここは,京都らしいのだろうかと言われると,そう思えたりするのは不思議です。でも,外国ですよと言われたらそう思いそうにもなったりします。この水路閣は,日本において,それも古都京都において不思議な存在感を作り上げている気がします。煉瓦といった素材が,この境内においては主張を強く出しているような気もしませんし,周辺の青もみじの美しさと相まって,この景観を作り出してくれているようです。ずっと残ってほしい京都の景観です。

青紅葉も見られます


2023/05/05

夜久野の植生調査

 福知山市夜久野には里山があります。クヌギやコナラといった二次的自然やスギやヒノキといった人工林の植林地などの植生がみられます。京都府立大学地域貢献型特別研究(ACTR)の一環で,「京都府北部のMALUI連携による文化資源を活かした地域づくり」のテーマで調査を実施しました。ゼミ生にとっては植生調査の経験を踏んでくれましたので,ランドスケープを学ぶ者にとっての演習として良い経験になったかと思います。

 この里山は末窯跡群のある空間で,今回の調査は,日ノ本南7号窯や日ノ本北12号窯の周辺の植生調査です。末窯跡については文学部歴史学科の学生さんたちが指導の先生と共に調査をしていますが,私は自然環境を担当しての調査に成ります。飛鳥から平安の時代にかけてといわれる末窯跡群のことを考えてみると,その当時から樹木を燃料に須恵器が作陶されていたとみて間違いないでしょう。すると当時の植生はどうだったのだろうかと,想像が広がります。

 広範囲に末窯跡が存在していますので,燃料の状況を考えると,ある程度の樹木は刈り取られていたのではないかと思うところです。その辺りは,土壌内の花粉分析をしている先生がいますので,当時の植生についてはゆだねるとします。この空間を見て思ったのは,幕末から明治初期にかけての,神戸の六甲山を撮った古写真を思い浮かべました。この古写真は,六甲山の樹木自体が,ほぼ無い禿山状態であるものです。現在の六甲山は植林等で緑に覆われた景観になっているのですが,当時は燃料などへの転用で,樹木が貧弱だったと実感できる古写真です。夜久野のこの末窯跡が広がっている場所もあくまで想像なのですが,平安の当時は樹木がだいぶ切られて貧弱な里山だったかもしれません。

 現在では,豊かな里山景観になっています。逆に燃料として使われなくなったものですので,遷移が進むでしょうし,また変化し続けていくだろうと思うところです。こういった環境は,高度経済成長以後,日本でいたるところに見られていくようになっています。人の影響が必要な里山景観は今後無くなっていくところが大半です。夜久野はどうなるのかまだ先は見えません。 

植生調査の風景です


2023/04/03

桜と青鵐

 桜の木の枝に青鵐(アオジ Emberiza spodocephala Pallas, 1776)が元気に鳴いていました。京都の北区にある原谷苑で見かけた光景です。人も多く来苑している中で元気よくさえずっていたのです。人のことをあまり気にしていないようです。桜色の花とアオジの黄色がよく合う感じです。アオジは,この京都では冬によく見られます。そして人が近づいても逃げないことも多く,近くで観察することもできます。人が悪さしないのを知っているかのようです。声もきれいですし,鳴きだしたら結構目立つ鳥です。

 桜を見ながら,声を聴きながら,この春の光景は,日頃の疲れも飛ぶような,とても良い気分になりました。

桜と青鵐


2023/04/02

太鼓谷稲成神社の鳥居と桜

 この太鼓谷稲成神社はお稲荷様ではなくお稲成様です。ですが,津和野百景図の「第二十一図 太鼓谷稲荷神社」は稲成ではなくて稲荷です。栗本格斎翁が間違えた?のかもしれませんし,もしかすると,当時はその言い方だった?かもしれません。

 百景図当時の絵と今の景観を比べてみると鳥居の数も今の方が多そうですし,景観も今の方が華やかな感じです。時代図るとはいえ,宇迦之御魂神様を祭るこの神社の位置や佇まいは,江戸時代と今を繋ぐ大切なものだなと実感できます。

 桜の季節に成れば,朱の鳥居との調和が何とも美しい景観を作り上げて言いますので,この時期だけの贅沢な風景と云えますね。

鳥居と桜


2023/04/01

旧津和野城の馬場先櫓

 津和野高校に隣接する場所にこの櫓は現存しています。津和野城は山城で,霊亀山にある城ですが,城郭そのものは霊亀山に残っておらず,唯一平地に置かれたこの馬場先櫓と物見櫓のみが残っているにすぎません。この馬場先櫓は江戸末期の火災後に再建されたといわれているものですが,当時の状況を垣間見られる唯一の建築物かと感じました。同様なものが,山城の方にもあったと考えると絵図にも描かれた壮大な城郭建築があったのだろうと想像してしまいます。廃藩置県で明治4年には廃城となり,積極的に解体されたため,今では石垣などが残るのみです。だからこそ,この馬場先櫓の存在は,景観の想像を膨らませてくれるものかと感じています。

 この櫓からちょうど東側を見ると青野山が垣間見られることから,津和野百景図ともリンクし,江戸期の光景がおぼろげに見ることができると思いました。ちょうど桜の季節で,桜と櫓,そして青野山。良い春の風景です。

馬場先櫓と桜


2023/03/16

善海田稲荷

 石巻南浜津波復興祈念公園の中にある善海田稲荷です。東日本大震災の津波と津波火災で,ここの場所は,大きな被害を受けました。その後に作られた南浜津波復興祈念公園の敷地の中に,このお稲荷さんはおられます。此処にあることは,震災前の記憶を繋ぐための大切なお稲荷さんと感じられます。同じようにこの津波復興祈念公園には,北向地蔵さまも安置されています。このお稲荷さんとお地蔵さまは,地域の記憶を繋いでくれる大切な存在です。此処にお稲荷さんがあったことで,震災前に住まれた方の記憶が少しでも残ってくれるのではないかと感じます。

 私が訪れた日に,ちょうど足の悪い高齢の女性がタクシーで来園していました。震災前にこの地に住んでいたそうで,震災後初めてここを訪れたということでした。「今では公園の芝が敷き詰められており,かつての家屋があった光景はわからないものの,このお稲荷さんのあるお蔭で,自分の家の位置がおぼろげにわかります」と聞きました。

 私たちは記憶を霞(かすみ)のようにしてしまうこともできます。これは,つらい記憶を薄くする効果としては大変有効です。しかし,薄くすることで,自身の立っている位置がわからなくなってしまうのは,良いと云えないかもしれません。記憶を繋ぎ留め,記憶を次へも続けて残してくれる。このことは,このお稲荷さまが,その手助けをしてくれているということになり,私たちにとってとても大切なことと言えるのではないでしょうか。

 そこにあることの意義と意味,その存在感が醸し出す景観は私たちにとってとても大切なことと言えましょう。なくなった景観を繋ぎとめるもの。景観を研究の対象としている者として,考えるべきことだと強く感じています。

善海田稲荷さま

2023/03/15

石巻市震災遺構門脇小学校

 門脇小学校へ行きました。津波火災で残った本校舎の躯体をそのまま展示し,展示室での開設も分かりやすく,実際に見て学べる施設になっています。見るだけで圧倒される空間の中で,この遺構の存在意義はとても大きいものだと感じました。かつて,この門脇小学校周辺には沢山の家屋があった場に小学校遺構のみが残っているのは,この地元で生活されてきた人にとっての灯台のような意味合いを持つのではないだろうかと感じました。

 講義で自身の専門と自分が阪神の震災経験を重ねてのランドスケープの講義をします。が,ここ数年,この3月中旬に東北の震災に関する公園や遺構に行くたびに,講義で伝えたいことが増えています。本当であれば,講義を聞くよりも学生らには,実際に来て,見て,そしてこの空気感を感じて欲しいといつも思います。地元神戸の阪神大震災の記憶も町の中から,だいぶと無くなりました。遺構自体も,そもそも余り残っていない中で,これからどう継承するのか,記憶をどう繋ぐのか,この場所に立ってみて,同じなのだなと感じます。

 震災遺構を残すことに心苦しい人も多くいるでしょうし,見たくない人もいるでしょう。私も阪神の折はそうでしたが,残しているからこそ,点であっても記憶が繋げられると感じます。この場所を訪れた人にとって,記憶を続けられ,そして紡げられると感じています。

 ここは,人間にとって大切な震災遺構です。

門柱は再現されたそうです


2023/03/02

満濃池と神野神社

  満濃池は日本最大級の灌漑用ため池です。また名勝にも指定された大変大きく美しいため池です。写真の場所は神野神社境内からの写真ですが,石の鳥居と池の景観が美しい場所です。満濃池は全国的にも有名ですが,水鳥も多く見られますし,山々と水の景観や周辺の文化財との兼ね合いもあって,大変魅力的な空間だと感じました。この景観が時間をかけて今に至った経緯を考えると先達の努力のたまものなのだなと強く感じる灌漑ため池の景観です。

鳥居と池の風景


2023/03/01

猪名川町のホオジロ

 猪名川町柏原地区にあるヒダリマキガヤの調査の折,ホオジロ(Emberiza cioides Brandt, 1843)を見ることができました。畑地の横の畔にあった景半木にとまっていました。啼いていたり,じっとしたり,動き回ったりと,休んでいるときのこういった光景が見られるのは,少しの息抜きになります。ホオジロが複数動き回っている光景は中々楽しいものです。

ホオジロです


2023/02/27

竜山一号墳石棺の据え付け

 高砂市生石の生石神社横には竜山一号墳があります。私が2003年ごろから高砂の竜山石関係に携わってからもう20年が経ちました。その時から気になっていた石棺。むき出しで今にもずれ落ちそうだった石棺でしたが,今回,整備をすることになり,その立ち合いをしてきました。70トンのクレーン車を用いての石棺移動で,蓋と身で約520kgもあるものですので,時間がかかるかと思っていました。さすがに石材業の皆さんです。きっちりとされている様は,プロフェッショナルだなと感心しましましたし,とても安心感がありました。据付の際には,今まで見られなかった身の底辺部の状態,また蓋を閉めた際の形状など,観察が出来ることも沢山ありました。

 この一号墳は,『史跡 石の宝殿及び竜山石採石遺跡保存管理計画』の一環でもあるので,整備を進めてきましたが,まだまだ周辺の整備がこれからも継続していきます。しっかりと据えられて,令和5年度には,わかりやすい解説もある案内表示板と共に,見学がスムーズにできると思います。ぜひ生石神社の石の宝殿をご参拝した帰り見てほしい石棺です。

クレーンが大きいです


2023/02/10

福岡のクロツラヘラサギ

 博多湾のクロツラヘラサギ(Platalea minor Temminck & Schlegel, 1849)とヘラサギ(Platalea leucorodia Linnaeus, 1758)です。多々良川河口や和白でも確認できました。多々良川などは,私自身が以前住んでいた筥松の横にあったのに,もっとよく鳥類の観察をしておけばよかったと今さらながら後悔しました。今回,九州産業大学での鳥類観察の関係で行ったのですが,クロツラヘラサギが飛来できる福岡の環境の存在を考えるきっかけになりました。また,アイランドシティにできる野鳥の公園のことも,何かしら考えるきっかけをこの鳥たちを見て思いました。

 160万を超える人口の都市で,こういった鳥類が生息できるというのは,福岡の大きな財産でもあると感じます。生物多様性を考える中で,色々な意見はありますが,大型鳥類が滞在できる環境は貴重です。その環境の在り方をどう維持していくのかを考える中で,この福岡市だけではなく,周辺の町も含めての広域的な視点での環境を考えなければなりません。

 クロツラヘラサギはIUCN 2023をみると増加傾向になっていると書かれていますが,成熟個体が2,250羽(201710月最終評価)しかおらず,楽観はできません。このサギが今後も生息できる環境を考えるにあたって,福岡の多々良川や博多湾の環境は大きな意味を持つといえます。

サギ2種います


2023/01/25

並ぶスズメ

 大阪の公園での鳥類調査の時に,公園に隣接する柵にスズメがきれいに並んでいました。スズメは私達にとって大変身近な鳥類で,私が最も好きな鳥です。動きや行動,見ていて飽きません。京都もそうですが,大阪でもスズメは結構な個体数が見られます。特に,巣が作り易そうな場所,昔ながらの建築が有ったり,電柱に使われているパイプの隙間だったりが多く確認できるところは多いような感じを受けます。また,冬季には採餌できる場,空き地でも草本が有ったりする場所や公園などに多く集まっています。今回のスズメは恐らく何方からかの採やり・・を待っているのかもしれません。寒い中で,羽を膨らませて空気をいれて,空気を温めながら待ち続けているような感じを受けます。

楽譜の様です


2023/01/17

南天と場

 新年に入りましたが,旧暦の春節の前。仕事の帰りに,大津市にある圓満院の名勝庭園を見たくて訪れました。三井の名園と言われる庭に行き,京都御所から移ってきた宸殿に向かいますが,その途中で南天を壺に活けているのを見ました。南天は,良く難を転じて・・・と言われる縁起の良い植物で,私は南天を寒い中で見ると,お正月を彷彿とさせてくれます。この寒い時期に赤い実を見せてくれる植物は幾つかありますが,中でも南天は良く目立つ植物ですので,意識が行ってしまうようです。庭園を見るために通る場で大壺に活けてある南天は,存在感を保ちつつも邪魔にならない雰囲気を持っており,とても良い雰囲気を醸し出してくれています。

 植物を活けるといった,ちょっとしたことで,その場の雰囲気が大きく変わります。空間をどう活用するのか,感性が大きく関与することにもなりますね。空間の場をどうするのか,景観を学ぶことの大きな点かと思います。

大壺と南天