2022/04/30

淀川河川敷と鳥,そしてみどり

 大阪市の中心部を流れる淀川は,大阪にとっても大きな緑地を有する空間です。この緑と水の動線は,人にとっても生き物にとっても大切な空間といえます。今回,院生のフィールド調査でこの空間の確認に来たのですが,昔からそんなに変わっていないような,でも何かしら変わってきているような気がします。向こう側に新梅田シティやグランフロント大阪が見え,淀川のワンドにヨシやチガヤが生えて,鳥にとっても生息,繁殖の環境を提供してくれています。この日は,オオヨシキリ(Acrocephalus orientalis (Temminck & Schlegel, 1847))やセッカ(Cisticola juncidis (Rafinesque, 1810))が見られ,大変賑やかでした。このような大都市の街に隣接して緑の環境が見られるのは,水都大阪にとって宝のような環境だとつくづく思います。

 現在進んでいるうめきた2期工事と合わせて,緑のパッチ(patch)とコリドー(corridor)がどうなっていくのか,楽しみでもあり,気になるところです。大阪の街中の緑のポテンシャル,そして未来へ進んでいく次の緑の空間を考えてみると,色々と可能性が広がりそうで,気持ちも高まります。大阪の都市生態系にとって,どういった形になっていけれるのか,また生き物たちとどう付き合っていけるのか。都市に住まう私たちにとっての次の緑を含んだ「まちづくり」,そして生きた(活きた)まちづくりに向けて,思考も増えますし,視野も色々と見えてきそうです。

 さて,これからどういった鳥たちが見られるのか,この淀川河川敷だけでなく,周辺の環境も併せて,ゼミ生の調査と共に解析をしていければと思うところです。

淀川


2022/04/15

津和野の春の光景

 津和野は町の歴史が重層した光景がそこかしこに見られます。江戸から昭和へと続く時間の光景です。江戸のころからの城壁や通りや修繕された建築。明治期以降の建築や区割りなど,栗本格斎翁が描いた「津和野百景図」の幕末の空間がそこかしこに見てとれます。

 写真のような蒸気機関車が走っている状況は,懐かしさも併せて何とも良い光景です。汽笛の音も合わさってサウンドスケープが素晴らしく,その場で立って見ていたり,蒸気機関車にひかれる客車に乗って車窓を眺めても空間の楽しさがあります。ちょうど春の風景としての菜の花が咲いて,津和野川の鉄橋を蒸気機関車が煙をもうもうと出しながら走り,汽笛を鳴らしてくれているのは,視覚,聴覚,臭覚といった感覚を楽しめる空間を提供していると言えるでしょう。

 単にノスタルジック(nostalgic)な空間ではないのかという考えもあるでしょうが,人の記憶のノスタルジア(nostalgia)は,経験したことだけではなく,先達から聞いた話や書物からの情景などが重層化しての一部でもあり,形容しがたいものかもしれません。今回の津和野での光景は小学生の時,同じように蒸気機関車に乗せてもらった記憶とオーバーラップして,感慨深いものを感じました。

3月下旬の光景です


2022/04/01

気仙沼市震災復興祈念公園

 震災復興祈念公園が令和4311日に開園したと聞いて,314日に行きました。気仙沼市の陣山の上に「祈りの帆」のモニュメント,そして3つの彫刻と,亡くなった方々のお名前が刻まれた空間があります。自身も神戸での被災者だったことから,神戸の東遊園地の祈りの場とオーバーラップするのですが,この公園の存在意義はとても高いと感じました。これから色々な意見が出てくるでしょうが,私個人としては訪れて,良い公園だなと感じました。何よりも祈りの場と,それに連なるモニュメントの空間。この祈りの空間が被災者にとっては,つらい経験を改めて思い出したとしても,それをつつんでくれる公園の様な気がしたのです。

 この公園に孫と一緒に訪れていた被災者の女性に話を聞いた中でも,公園が作られてよかったとの意見が聞きけました。楚々とした高台にある祈念公園ではあるものの,気仙沼市にとってとても重要な,灯台のような公園になっているのではと強く感じました。

 被災地での震災祈念公園は東北各地に設置されています。その公園を見てきた中で,どの公園にも存在意義を感じます。その中でも,この気仙沼市の震災祈念公園は,改めて考えさせてくれる公園ではないかと思うのです。大きな公園にも多くの意味はありますが,私にはそれ以上にこの気仙沼市の公園は,震災に向き合えられる公園だと感じました。今回,調査ではありましたが,大学での講義でも伝えたいと思い,各地の祈念公園を回りました。その中でも,私にとってこの公園は,機会を作って,ぜひ訪れてみたいと唯一感じた公園でした。

彫刻は考えてもらう装置

祈りの帆(セイル)伝える意義