2022/01/22

青野山と麓の遥拝所

 青野山(あおのやま)は国の天然記念物,名勝に指定されている山です。アダカイト質安山岩の溶岩ドームによる山で,見ると優しい雰囲気をもつ美しいお山です。日本遺産の「津和野百景図」にも何枚も描かれているように,津和野の町にとっては大切なお山です。この活用や整備について,これからしばらくさせてもらうのですが,山には信仰の場として頂上近辺に山王権現様が祭られています。その権現様まで行けない参拝の方向けの信仰の場として,青野山の麓にも遥拝所がかつてあったようです。これから調べていかなければいけない部分ですが,今でも鳥居が残り,そして石積みが残っています。かつては近隣集落によってお祭りも昭和の時代には有ったと聞いていますが,近年は行われていないようです。遥拝所が無くなった経緯は,これから調べていくと明らかになるのかもしれませんが,地元の方に早めに聞かなければわからなくなっていくような気もしています。こういった古くからの行事や風習などは,途切れていくと徐々に風化されていきます。それがいい場合もありますが,ここはそうはいかないかなと考えています。

 かつては,しっかりしつらえた石積みも風化してきています。崩れている箇所も確認できていることから,どこまで整備を考えていくのか悩ましい所です。そして,何よりも杉の木々が大系木化し,石積みした石材への圧迫もどうやらみられるようです。ここは登山道でもあるので,安全性も踏まえると,これらの木のことも考えなければなりません。石積みを直すのも必要な場合がありますが,直さないのも一つの選択です。これは,「朽ちていくのも一つの景観」であるからです。ただそこには,安全性も考慮しなければなりません。史跡や名称といった文化財の活用を考える上では多くの問題も山積しています。個々の整備が良い整備につなげればと思っています。


鳥居です

遥拝所跡の石積み

2022/01/12

津和野藩校と津和野百景図の活用

 昨年下半期より津和野町にある青野山の整備に関わっています。その話し合う場所として津和野藩校養老館で行われました。こういった会合の場所で藩校での利用は,私にとって初めての経験で大変新鮮でした。洲本市でも国名勝の旧益習慣庭園の整備や保全の打ち合わせでは純日本家屋の空間で行われるのも,心落ち着くものですが,この津和野藩校は中を上手く残しながら,リノベーションされており,外から見えない冷暖房完備は驚きです。文化財の価値をそぐわないように活用する良い事例の一つかと思います。全てオリジナルに戻すことは可能でしょうが,直すべきものと,活用すべきものを上手く考えた例かと思います。ここは島根県指定史跡でもあること,昨今の文化財活用を踏まえたこと,また伝統的建造物群保存地区でもあることを考えてみると,その整備には苦労もあっただろうなと感じます。

 注目したいのは藩校建築の内部で,江戸期の雰囲気を保ちつつ,学べる空間を維持構成していることです。そして,中庭も丁寧に整備されており,江戸の雰囲気を感じつつ,江戸から令和に繋がる時代の変遷で,良くこのようにしっかりと残ってきたのだなと,徐々に感じてくるものがあります。次の会合も楽しみです。

 数年前の平成の最後のあたり,2か年弱の期間ですが,日本遺産の「津和野百景図」の中の景観,地形,文化財,植生,生き物などについて景観生態と緑地計画の視点で調査を依頼され,全町域,旧津和野藩全域を回ってきたことがあります。その時,子供の時に訪れた時の津和野の街並みが変わっていないこと,そして改めて町全体を回って初めて知ったことも多く有りました。驚いたことに,この百景図の作者である栗本格斎(栗本里治)が見て絵で残した空間と同じなのだなと強く思いました。格斎翁が仕えていた幕末の津和野藩主・亀井茲監の時と同じ光景だということが江戸と令和を結ぶ面白さと時代を残してくれたことのありがたさを感じました。

 藩校の活用は目に見える利用については多いですが,この百景図は中々活用をするにあたって,観光や学習など,媒体としてまだまだ利用できそうです。学ぶことにおいて,この空間が残っていること自体ありがたいことです。歴史と時代を見えない線をむすぶ大きな役割を「津和野百景図」は担っています。絵ですが,それだけでも活用ともいえる一つかと私は思うのです。

養老館の中庭です


2022/01/03

上七軒のお正月光景

 新年に入り,上七軒を散歩がてら通りました。上七軒の近所の北野天満宮さんは非常に沢山の参拝客で,迂回しての移動です。コロナ禍の中,多くの人が参拝される光景を見るのは,2年ぶりです。人が余りにも多いので参拝はあきらめましたが,上七軒では人込みも無く,穏やかに歩けます。ただ,人よりも車が通るのが多いですが,車道ですので致し方ありません。

 花見小路通や一年坂,産寧坂も同じですが,景観を考えて地下にライフラインを埋設されているので,すっきりとした景観が見られます。無電柱化事業です。また,石畳でもあるので,そういった点では景観に配慮した空間を維持されていると思います。京都の街中について,電線等を地下埋設に順次進めたいと市は言っていますが,中々進まない中でもピンポイントで景観上大切なところから進められています。予算が掛かりますが,どこまで進めていくのかも興味深い所です。

 街の中の景観は一長一短では構築できないもので,街に住まう人,使う人の醸成によって構築されて維持されていきます。そこに風習や文化などといった,時間のデザインで作り上げられていくものです。難しいものではありますが,長く続けられる景観であった欲しい所です。

人は少ないです