2011/06/25

音楽の時間

 府立大学に来て良かったと思うことがあります。そのひとつが大学の真横にコンサートホールがあることです。加えてもう一つ良いことは、京都市には楽団があることです。京都市交響楽団と京都コンサートホール、大学の横にあることは、音楽の楽しい時間を過ごさせてくれます。東京で働いているときにも、職場の近くだった上野などのホールへは行っていましたが、今のように職場の真横ですぐそばにあることは、わくわくするほどうれしいものです

 今回、聞いたのは、第547回の定期演奏会です。マルクス・グローさんによるリストのピアノ協奏曲の演奏。まさに圧巻でした。ピアノの音が交響楽団の音と調和し、昇華しているような感じを受けたのです。調和といってもいいのか、ピアノの音が、弦楽器と織り成しているような、目に見えない織物を耳で見ているような錯覚を覚えました。

さらにアンコールで演奏してくれたシューベルトの「ます」編曲で、音が飛び跳ねているような、鱒が川面にいる蜻蛉を捕ろうと飛び跳ねているような、そんな感じを受けました。その後のチャイコフスキーも良かったのですが、それ以上にピアノの音がまだ頭の中では飛び跳ねている、そんな余韻も残っています。仕事の疲れも、飛んでいくような感じです。

 彼のメッセージがホールで提示されていました。ゲーテの“Die Geister, die ich rief…Der Zauberleherling(“私自身が呼び起こした霊たち…”魔法使いの弟子)彼がメッセージの最初に書いてあった一節です。彼自身、チェルノブイリ事故の時に16歳で、ヨーロッパでの放射能の問題に体感した人だからこそ、そのメッセージが重く感じました。私とほぼ同じ年で、世界の移り変わり、ソビエト連邦の崩壊やベルリンの壁の崩壊、東西ドイツ統一などもほぼ同じように見てきた中で、重いメッセージを発信できること、音楽家としてできることを示していること、頭が下がる思いがしました。

 自分には何ができるのだろうかと、真剣に考えなければならないと感じました。

リーフレット