2021/11/28

水際の緑と高速道路

 阪神高速高架下の水上から見ると幻想的な光景に出会えました。太陽の光が深緑の色に変わり,樹木の緑を鮮やかに見せてくれている光景です。無機物による人工物と樹木の有機物による構成は,都市美として興味深く感じます。こういった組み合わせは都市では当たり前ですが,そこに光などが重なるとまた違う光景が広がってきます。

 写真では護岸部分に木が多くあり緑が多く見えています。残念ながら,この水面部に水鳥たちはほぼ飛来してきません。それは高速道路と両岸側に建築物があることで,囲われた空間になっているためです。水はきれいであっても飛来しにくい環境をここの空間は作り上げています。生き物の多様性といった点で見ると,ここの環境は生物多様性が低いと言わざるを得ません。しかし,街中では,緑地空間も存在し,都市河川の存在もあることを考えると,そういった個所では鳥も飛来し,生物多様性が高くなっているのも確かです。どこもかしこも「生物多様性が高いと良い」とは,私は思っていません。もちろん高い方がいいとは思いますが,少なくとも必要な場所で,適材適所に生物多様性が高まることが必要と思います。都市には生き物だけではなく,様々な要素が重なり合って都市を作り上げています。それが都市の魅力を作り上げています。写真のような空間もしかりです。

 そういった視点で改めて見てみると,都市には魅力的な空間がたくさん見えてきますし,一瞬一瞬に美しさも見えてきそうです。

水の緑

2021/11/22

イサムノグチの彫刻

 札幌市の大通公園には,イサムノグチの「black slide mantra(ブラック・スライド・マントラ」」が置かれています。私は,札幌に来ると必ず見ています。見るたびに,滑り台のような石の部分がすれて行っている気がして,時間の経過を感じられるようです。体感する芸術作品ですね。こういった作品の設置は,公共芸術(public art)として高く評価されるものだと思いますし,この作品は札幌市の宝物です。設置されていること,設置を決めてしっかり根付いていることに,正直羨ましく思います。そして,この作品は札幌にあるからこそ価値があるのだとも言えます。

 ランドスケープの設計の中で,こういった作品をどう置くのか,またどう活用していくのか,デザイン,構成も考えての活用が必要です。この作品はそれを上手く設置できているものだなと感心してしまいますので,つい札幌へ行くと見に行ってしまうのかもしれません。ある意味,私にとってのこの公園へ向かうための誘因力になっている力強い作品です。

 芸術作品の公共空間へ置くことについては,色々な研究もあります。カトリーヌ・グルー(Catherine Grout)著による「都市空間の芸術(ISBN4-306-07210-X)」を今は無き地元神戸の海文堂書店で2004年の時に注文して買って,初めて読んで,だいぶ公共芸術への認識が変わりました。やみくもにあるのは望ましくありませんが,やはり公園のアクセント,象徴として,またその都市の文化の醸成として必要な場合も多いと感じています。そういった点を踏まえて,意識する,しないにかかわらず,見ていくことは必要だなと感じます。


滑れます
階段です


2021/11/15

余市の雪吊

 余市にあるニッカウヰスキー工場敷地内の緑化は,大変丁寧に管理されています。工場はもちろん良いのですが,敷地内の植栽に大変興味を持ちました。

 北海道の冬は,もうすぐそこまで迫っているこの時期。雪がいつ降っても大丈夫なように敷地の樹木に雪吊や雪囲いなど植物たちの冬支度が行われていました。冬支度には,雪囲い,雪吊に加えて菰巻きなどもありますが,雪対策の管理でその植物は,雪の重みなどによる被害を低減できますし,冬の景としても映えるものでもあります。管理は大変でしょうが,冬の景観を楽しめることを考えると,雪が降った際の見学もしてみたいなと強く感じます。


冬支度


2021/11/14

トクサの群生

 トクサ(Equisetum hyemale L. var. ramosum Honda)は,京都にある私の家の庭にも植えていますが,自生しているトクサをしっかり意識して見たのは初めてです。地下根で広がる植物ですので,土壌や気象条件が合えばどんどんと増えるのでしょう。このトクサの写真は,札幌市の野幌森林公園の谷部斜面での一コマです。トクサの群生について自身が余り注視していなかったのですが,これだけ自生するのかと感心しましたし,こういった斜面に広がるのかと勉強になりました。

 トクサは秋の季語という事ですので,ちょうどこの晩秋と合っていたのでしょう。

トクサの群生です


2021/11/11

大徳寺境内の赤松

 いつ見ても,京の大徳寺内の植栽はきれいにお手入れがされています。そして,いつ行ってもすがすがしい感じを受けます。自身のお寺でもあるし,家の近所なので散歩でも頻繁に訪れるのですが,行くたびに思うのは,「いつもきれいに剪定されている」というのを感じるのです。丁寧な剪定のお仕事を見て,「これは学生に見せた方がよいな」と写真を撮り,講義に使ったりしています。

 お寺や神社に限らず,個人も含めて,その所有されている場やお庭などをみると,その関わりのある方の気の掛け方,思いが見え隠れしてきます。少しの関わりなのでしょうが,京都ではそういった少しの気遣いや見せ方が見えてきますので,その点はいつも勉強になるところです。


アカマツの透かし剪定


2021/11/05

動物園のランドスケープ見学

 府立大学の創立記念日であるこの日は,全学休講ではあったのですが,コロナ禍で延期になっていた環境デザイン学科の1年生の研修が,この日に行われました。私の担当は,岡崎周辺の景観を含めた京都市動物園におけるランドスケープ。京都市動物園にて1年生の研修をさせていただき,そのサポートをゼミ生が手伝ってくれました。この京都市動物園は,周辺の景観をうまく活用されています。東山の借景をうまく取り込み,狭い敷地ではあるのですが,広がりのある空間に作り上げています。見通し線をうまく樹木で構成していたりと,学ぶことが多い施設です。

 1年生の研修後には,ゼミ生と「京都の森」ゾーンで見学とレクチャーです。このゾーンは,造園・ランドスケープらしい空間で仕立てられています。京都市動物園には,良いゾーンがいくつもあるのですが,その中の一つです。個人的にも私はこのゾーンが好きで,来園したときには良くここを見学します。造園的技法がいくつも垣間見られ,ゼミ生にとっても勉強になったのではないかと思うところです。

京都の森


2021/11/01

堀川通の街路樹景観

 この時期の堀川通はイチョウが中心ですが大変美しく色づいていきます。晩秋に入るころには黄色の景観が見事です。特に中央分離帯に植えられているイチョウは剪定を緩やかにしているので,樹形が美しい木が何本かあります。基本,街路樹は遠征住民の方々の生活や街路を使用する方々,車を乗っている方々に向けても,「剪定」は必要です。落ち葉の量が多いことによる家屋へのプレッシャーや人が雨露と落ち葉で滑ったりすることもあります。また,車の信号機を隠してしまう街路樹も有ったりするので,管理は必要です。落枝もありますね。自然災害による倒木の倒壊を防ぎ必要もあります。

 問題点は色々と出つつもそれを超えられるような利点も多いのです。季節感の創出と緑による心理的緩和,周辺の大気の環境改善,生物多様性への寄与。それだけではなくたくさんあります。

 米国では i-Tree によって数値化され,街路樹の重要性も出していす。我が国ではどうでしょうか。最近では東京・千代田区では,数値化を出している例もありますし,京都でも数値化をした研究事例もあります。私も堀川通の数値化を進めていますが,公表には,まだもう少し先になりそうです。研究者としてスピード感も必要ですが,私の研究は遅々として進まず,少々情けない所です。

堀川寺之内です