2021/12/31

大徳寺境内と降雪

 今日は,京都にも雪が降りました。家の近所の大徳寺境内にも雪が舞っています。京都の四季は,どの季節も顔がはっきりしています。特に,京の冬の寒さと雪の降る寺院境内の景色は,白黒映画のような雰囲気を持っています。

 景観は「見るもの」ですが,実は「体感するもの」でもあります。写真で見る景観もいいのですが,本来だと現場で見ることも良いと思います。

 写真は,その空間と時間を切り取ります。それも興味深いですし,撮影者の被写体への見方や構図が色濃く出てきますので,写真を撮った人の好い景観,良い風景にあたると言えます。それに写真は,配信や持ち運びができるので多くの人にも共有できます。それが写真の良い所ですし,色々と活用できるものです。例えば,旅情をかき立てる鉄道会社のポスターで使用したり,景観評価のアンケートなどにも使用ができますね。

 では,景観を体感する事とはなんでしょうか。それは,五感を加えた景観の事です。冬の寒さの中での頬にあたる温度感や体にあたる風の具合,季節咲く花,例えば,冬に咲く蠟梅の花や香り,お茶事の時のお茶の味など・・・五感に寄り添う事も多いといえます。景観は,五感と合わさることで印象深くなる事もありますし,写真も切り取ったものですが良い点があると言えます。

 さて,この写真は雪の降っている時のものですので,多分ですが寒さは伝わると思います。ですが,実際そんなに寒くない日の撮影だったのです。写真で見る景観と現場での景観のギャップ。印象の違いは面白く感じるものですね。景観の研究の難しい所でもあり,おもしろい所でもあると言えるのではないでしょうか。

雪が降っています


2021/12/29

ノスリから農環境を考えてみる

 南丹町の農空間でノスリ(Buteo japonicus Temminck & Schlegel, 1844)を見かけました。農空間によく見る猛禽類です。京都府では純絶滅危惧種として指定を受けています。京都に赴任した頃,キャンパスに隣接している賀茂川でよく見かけましたが,最近はそういえばあまり見かけていません。ずんぐりとした体形ですが,小型哺乳類を捕食したりするので敏捷です。南丹の圃場では,採餌できる小型哺乳類もいるという事にもなりますね。

 近郊農村の環境は,私が農学の実学を学んでいた学部生の時や,院生で農村空間での調査を始めた頃に比べて大きく変化しています。20年前の事ですから,それはそれは,だいぶ変わってきています。二次的自然と言われる農環境は,生き物にとり,その環境に依存している種にとっては死活問題で,実際減少している種も多くいます。その点が大きくクローズアップされますので,多くの方々の目には,多様性が減少している,種が減っていると思うと思います。例えばメダカなどが挙げられますね。身近だったはずと思い込んでいたと思うのですが,実は徐々に生息環境が無くなってきていたのです。生息環境を戻せば元に戻るでしょうが,人の問題や経済の問題もありそう簡単には戻れないかもしれません。生き物が減ってしまうと云った一面が多くある反面,生息環境を広げている種もいたりして,生き物はしたたかに環境に順応したりしています。一概に数字で出すことが出来れば楽ですが,どうもそういったことは,生き物に充てはめること自体,難しいようです。

 このノスリは,猛禽類で「高次捕食者」です。いわゆる食物ピラミッドの上位種にあたります。ですので,その下位部にあたる採餌するための生き物の環境が担保されなければ,この子たちは生きていけません。鳥種を見ることで,その環境も少しは推し量ることができます。したがって,この南丹の農環境は,彼ら彼女らにとって良い環境だと言えることが推察されます。こういった農環境が続くことで多くの生き物の生息が維持されると考えると,何がよい環境で,悪い環境は何なのか,考えるきっかけを作ってくれます。


ノスリの見る先は・・・


2021/12/22

大阪のハッカチョウ

 綺麗な声で鳴いているなと見渡すとハッカチョウ(Acridotheres cristatellus (Linnaeus, 1766))がいました。モズの鳴きまねの様に鳴き真似をする鳥でもあるのですが,綺麗で澄んだ声で,厦門に住んでいた時をふっと思い出しました。竹で造られた鳥籠の中にハッカチョウ(八哥)やソウシチョウ(嘴相思)を飼っている人がいて,公園で鳴き合わせをしていたりしていた光景を思い出したのです。そういった光景は今の日本では,ほぼ見られない光景かと思いますが,中国ではまだそういった光景を見ることができます。鳥の飼養文化なのでしょうね。

 さて,日本でのハッカチョウは,江戸時代に大陸から持ち込まれた飼養鳥類ですが,篭脱けなどによって,とうとう今では侵入生物,いわゆる「外来種」としての方が有名です。彼ら彼女らにとっては,気が付いたら大阪で生きていた・・・という事なのでしょうが,生態系的にも見ても難しい問題と言わざるを得ません。生き物にとっては「生きる」ことが主に大切であるといえるでしょうが,その存在が他の生物にとっての脅威もあること,生息環境の競合,競争も考えると,益々複雑になっていきます。結局は生態系の事を考えて,外来種となる生き物は,生息していない方がよいという事ですが,それでも複雑な気持ちになってしまいます。

 台風等で迷鳥として皆に日本に自然渡来で来たこともあるハッカチョウたちの事も考えてみると,更に複雑になってきます。もしその子たちが定着して北上したらどうなのだろうかとか・・・。生き物の生息環境の拡大は,多々あると思います。今いる環境が悪くなれば,それよりもいい環境を目指しますし,もしくは更に拡大化して大きく生息できる範囲を確保することも,本能として必要な部分でしょう。

 さて,どうすべきなのか恐らく明確な答えは出せるのだろうかと思うところですが,哲学的な思考が入ってきてしまいます。生き物の視点,人間の視点。難しいですね。まだまだ私も明確に言えそうにありません。


澄んだ声で鳴きます


2021/12/18

晩秋の万博

 今も大阪万博公園での鳥調査を継続しています。早朝,来園者がまだ入園されない時間帯では,鳥たちも多くが動き回る時間帯でもあり,観察がしやすい時間とも言えます。写真は,万博の日差しが入り込む里山エリアの早朝の光景です。

 コナラやクヌギなどが,だいぶと落葉したところに,落ち葉の上の朝露の水滴が太陽の光に反射して,見た目には,とても暖かく感じるものです。あくまでも見た目で,実はあまりにも寒い朝でした。ちょうど寒気が来た日で,京都では雪が積もっている日でした。万博公園では雪はなく,寒いとはいえ鳥たちは活発に動き回っていました。鳥類にとっては,朝の採餌に忙しく,じっとしていると多くの鳥たちが観察できます。特にこの里山の空間は,鳥たちにとって,重要な場なので逢うのは間違いないようです。

朝の日差しです


2021/12/15

大江橋水上景

 大阪淀屋橋の大江橋高架を進む作業運搬船です。水面との間が大変狭い状況で,潮の干満次第で通過できる時間帯が決められてしまうようです。作業船や運搬船にとって,自然の中での干満の差が大きく作業の効率を左右されるという事は,日々の潮位を見なくてはならないにほかなりません。私は,釣りをするときに潮見表を見て,その日の時間帯を確認しますが,大阪の真ん中でも同じことがあるのだなとなんだか不思議に思えました。

 景観として見てみると,橋と船の景は,「水都大阪」にとても調和したものに思えます。そしてあの上下の幅が狭い中を疾走していく光景はとても躍動感のある生活景かもしれません。日々普通の光景かもしれませんが,こういった景観はこの大阪の街中であるからこそみられる景でもあり,そういった景を見るだけでも活があるのではないかと感じています。大阪の街中で動くこういった景観は,とても興味深く感じる「水景」です。

隙間を通ります


2021/12/05

構内の紅葉

 タイワンフウ(Liquidambar formosana Hance)が今年も色づきました。下鴨キャンパスには成長したフウが何本か見られますが,写真の4号館と5号館の間に植栽されているフウの色づきは毎年の楽しみです。4号館にいた時は,それを眺めるのも楽しみだったのですが,いよいよ4号館の解体作業が始まりましたので,このアングルや構成で見る風景は今年でおしまいです。ちょうど公舎によってフウの紅葉とクスノキの常緑の緑が挟まって良い感じでしたが,解体後の空間の違いも楽しめればと思うところです。

 建物を無くし,新たな空間を作る際に,できるだけ既存の樹木を残して計画した方がその土地の空間の歴史を継承してくれます。地表の記憶の継承,地霊(genius loci)の事も考えると,空間をいじる場合の残すべきものは大切にしたいところです。最近のあまりよくないと思える事例では,由来の表札もつけていた地域のランドマーク的であったクロマツを行政が知らない間に切ってしまい,残念な空間になった元小学校も見られます。この小学校の卒業生の方の事をあまり考えていなかったのかもしれません。これから大きく変わるこの下鴨キャンパスは大学の空間として,良い空間になるだろうと期待しているところです。

今年も色づきました


2021/12/01

植物園温室

 京都府立植物園では12月の上旬までモミジのライトアップとして,夜間の入園ができます。併せて,温室も入館できるのですが,昼間見る温室と夜間見る温室は全く異なった表情を見せてくれます。ここの温室内には,興味深い植物がたくさん植えられています。カカオやバナナなどの産業植物は定番かもしれませんが,バオバブやアアソウカイ,そして何よりもキソウテンガイといった植物は,不思議な植物たちです。そういった植物たちを間近で見られるのは,凄いなと思うところです。大学隣接する京都府立植物園は,府大生や教職員も自由に入れる施設なので,とても良い生きた教材の宝庫です。ランドスケープを志す学生にとっても植物の名前を覚えるのにこれほどいい施設はないと思います。

 さて,写真の温室は建築としてみると,やはり面白い構造物です。湿度や気温などを調節する必要もありますので,開閉構造を作り上げています。宇宙船のような感じを受けたり,バイオームのような施設を受けていたり,見る人にとって色々な感想がある建築と言えるのではないでしょうか。

 ちょうど南の空に明るく見える木星も輝き,建築物が宇宙船の様に見えてしまいます。

宇宙船みたいです