2022/02/19

東横堀川護岸空間とゲニウス・ロキ

 東横堀川は私が思っていた以上に綺麗に整備がされていました。昨年の晩秋辺りから何度かここを水上から見たりしてきたのですが,今月になってこのβ本町橋に下船して少し界隈を歩いて,水都大阪の新しいウォーターフロントを目指しているのだなと感じました。私が学生の頃には,ここを訪れたことがあったのですが,あの時は昭和の残り香があるような商業空間だったような記憶が残っています。現在の今では,街中の緩やかな水と緑の空間を創出している感じを強く受けます。ここは,周辺で働いている人にとっても「楽しみ」と「賑わい」を見つけ出せそうな,そして,季節によっては穏やかに休める空間になっていると思われます。

 東横堀川の整備空間は,川に向かうステップ状の階段形状の石材ベンチ,使っている人にとっては開放的であるけれども人の視点を感じなくてよい空間を構成しています。そして,その空間は人の目もあることから安心安全な「場」にもなっているのが良くわかります。街の中での公共的な空間に死角があることは,良くないと思っています。そういった点を上手く回避できているのではないかと感じる設計,デザインになっているのではないでしょうか。

 またここでは,大阪にとって重要な碑も設置されています。日本永代蔵の井原西鶴の碑,「西鶴文學碑」があったり,諸説はありますが仮名手本忠臣蔵でも出てくる儀商としての天川屋儀兵衛こと天野屋利兵衛の「天野屋利兵衛之碑」を設置されていたりと,大阪の歴史と文化を垣間見られる空間にもなっています。こういった空間の活用はその場所の過去をつなぐものとして大切です。

 実はこれについて,私は大学の講義でも話しているのですが,「クリスチャン・ノベルグ・シュルツ(Christian Norberg Schulz)」の「Existence Space and Architecture1971)」や「Genius Loci1980)」に「地霊(genius loci:ローマ神話における土地の守護精霊)」といった記述があります。こういった碑は,過去と今をつなぐ「地霊」としての役割も担っているのではないでしょうか。ちょっとした意識をつなげることで,その町の歴史や空間性をより深く感じられるかもしれません。街の中にあるちょっとしたオープンスペースでも学べる場としての活用が見えてくると感じます。

ここは大阪でも古い船着き場です

春になると桜が咲きます





2022/02/09

垂直の庭

 新山口駅の通路に壁面緑化がされています。Patrick Blancさんのアート作品の一環でもある「Vertical Garden」です。完成は201510月。大変大きな作品で100m×50mの壁面いっぱいに植物が配置されています。もちろん植物ですので,自動潅水式による散水もしっかりされています。この新山口駅は,津和野の日本遺産の調査で2016年に下車して以降,気になる壁面緑化でした。それからしばらくしての2021年末に再び見ることになり,壁面がしっかりと保っていること,そしてこの新山口駅の空間に溶け込んでいるなと感じました。植物は地元の植物を中心に植えられており,とても好感を持ちました。壁面だけでなく,地上部にも植栽され,ベンチもあり,駅での穏やかな空気感を作り上げてくれています。緑の使い方にいおって,空間と一体化したこの作品は訪れる人にとっても良い刺激があるのではないだろうかと感じるところです。もしかすると,この垂直の庭があって当たり前の空間になっていることから,空気感的にも馴染んだ風景になっているのではないでしょうか。

 垂直の庭のあるこの新山口駅。昭和の終わりですが,祖父に津和野に連れてもらった時の駅名は,小郡駅でした。ホームに立つと小郡駅当時を思いだすことが出来ました。そこは古い雰囲気をまだ保ちつつ,この垂直の庭のある新しい空間とうまく調和し,線引きが出来ているなと感じました。町それぞれによって,様々な表情があります。新しいものと古いものがうまく次に繋がっていく空間づくりは大切だなと強く感じます。「絶つ」のではなく「つなげ」そして「つむぐ」。この流れは街の歴史を良い方へ作ってくれるのだろうと思います。これは新山口駅の垂直の庭がうまくつながっていくのではないかと感じるところです。この5年間,見た中での経緯でそう感じました。これから来年度も津和野へ行く機会がありそうですので,何度も新山口駅には訪れられそうです。そのたびに楽しく見させてもらおうと思っています。

みどりと駅