2023/03/16

善海田稲荷

 石巻南浜津波復興祈念公園の中にある善海田稲荷です。東日本大震災の津波と津波火災で,ここの場所は,大きな被害を受けました。その後に作られた南浜津波復興祈念公園の敷地の中に,このお稲荷さんはおられます。此処にあることは,震災前の記憶を繋ぐための大切なお稲荷さんと感じられます。同じようにこの津波復興祈念公園には,北向地蔵さまも安置されています。このお稲荷さんとお地蔵さまは,地域の記憶を繋いでくれる大切な存在です。此処にお稲荷さんがあったことで,震災前に住まれた方の記憶が少しでも残ってくれるのではないかと感じます。

 私が訪れた日に,ちょうど足の悪い高齢の女性がタクシーで来園していました。震災前にこの地に住んでいたそうで,震災後初めてここを訪れたということでした。「今では公園の芝が敷き詰められており,かつての家屋があった光景はわからないものの,このお稲荷さんのあるお蔭で,自分の家の位置がおぼろげにわかります」と聞きました。

 私たちは記憶を霞(かすみ)のようにしてしまうこともできます。これは,つらい記憶を薄くする効果としては大変有効です。しかし,薄くすることで,自身の立っている位置がわからなくなってしまうのは,良いと云えないかもしれません。記憶を繋ぎ留め,記憶を次へも続けて残してくれる。このことは,このお稲荷さまが,その手助けをしてくれているということになり,私たちにとってとても大切なことと言えるのではないでしょうか。

 そこにあることの意義と意味,その存在感が醸し出す景観は私たちにとってとても大切なことと言えましょう。なくなった景観を繋ぎとめるもの。景観を研究の対象としている者として,考えるべきことだと強く感じています。

善海田稲荷さま

2023/03/15

石巻市震災遺構門脇小学校

 門脇小学校へ行きました。津波火災で残った本校舎の躯体をそのまま展示し,展示室での開設も分かりやすく,実際に見て学べる施設になっています。見るだけで圧倒される空間の中で,この遺構の存在意義はとても大きいものだと感じました。かつて,この門脇小学校周辺には沢山の家屋があった場に小学校遺構のみが残っているのは,この地元で生活されてきた人にとっての灯台のような意味合いを持つのではないだろうかと感じました。

 講義で自身の専門と自分が阪神の震災経験を重ねてのランドスケープの講義をします。が,ここ数年,この3月中旬に東北の震災に関する公園や遺構に行くたびに,講義で伝えたいことが増えています。本当であれば,講義を聞くよりも学生らには,実際に来て,見て,そしてこの空気感を感じて欲しいといつも思います。地元神戸の阪神大震災の記憶も町の中から,だいぶと無くなりました。遺構自体も,そもそも余り残っていない中で,これからどう継承するのか,記憶をどう繋ぐのか,この場所に立ってみて,同じなのだなと感じます。

 震災遺構を残すことに心苦しい人も多くいるでしょうし,見たくない人もいるでしょう。私も阪神の折はそうでしたが,残しているからこそ,点であっても記憶が繋げられると感じます。この場所を訪れた人にとって,記憶を続けられ,そして紡げられると感じています。

 ここは,人間にとって大切な震災遺構です。

門柱は再現されたそうです


2023/03/02

満濃池と神野神社

  満濃池は日本最大級の灌漑用ため池です。また名勝にも指定された大変大きく美しいため池です。写真の場所は神野神社境内からの写真ですが,石の鳥居と池の景観が美しい場所です。満濃池は全国的にも有名ですが,水鳥も多く見られますし,山々と水の景観や周辺の文化財との兼ね合いもあって,大変魅力的な空間だと感じました。この景観が時間をかけて今に至った経緯を考えると先達の努力のたまものなのだなと強く感じる灌漑ため池の景観です。

鳥居と池の風景


2023/03/01

猪名川町のホオジロ

 猪名川町柏原地区にあるヒダリマキガヤの調査の折,ホオジロ(Emberiza cioides Brandt, 1843)を見ることができました。畑地の横の畔にあった景半木にとまっていました。啼いていたり,じっとしたり,動き回ったりと,休んでいるときのこういった光景が見られるのは,少しの息抜きになります。ホオジロが複数動き回っている光景は中々楽しいものです。

ホオジロです