2011/07/22

圓教寺のシカ

 姫路市の書写山圓教寺の庭調査の際に、野生のニホンジカ(Cervus nippon)を間近で見かけました。シカは人を恐れることなく、悠然としています。お寺の敷地ということもあり、なにもされないことを知っているのでしょう。シカ食害の問題は、昔からよく言われている所です。彼らにとってオオカミのような天敵となる生き物がいない以上、採食できる環境があれば問題なく増えていきます。今、日本の国内で野生のシカを確認するのは、そんなに難しいことでは無くなっています。

 以前、東京の財団で働いている際、ニホンカモシカCapricornis crispus)の調査で飛騨の山中にいたことがあります。山中で、たまたま野生のシカと目の前で遭遇し、とても驚きました。私が風下であったため、臭いで獣が居ること自体、分かってはいましたが、まさか目の前で会うとは思っていませんでした。その時に初めて、野生の獣臭がとても強いことを知りました。シカの方も私と急に出会ったことで、当たり前ですが、相当慌てたようです。私のいる山手側を急に駆け上がり、疾走し、掛ける際に蹴って行った石が幾つも落石となって、私に当たりそうで危険だったことを、シカを見ると思いだします。

 野生のシカの増加は、日本国内では、大きな問題になっています。唯一の天敵は、彼ら彼女らにとって人間ぐらいしかいません。しかし、私たちは、そのシカを捕獲し、消費することも殆どなく、減少しないシカに対して、食害などの獣害は目に見えて増え、今後どう対策を施していくのかが問題になっています。この圓教寺では、シカの対策として、植えた樹木などは、網で囲うなどの物理的な対応をしています。今、こういった対策しか打ち出せないのも事実です。お寺なので、殺生は好ましいことではありませんので、苦慮されていることと思われます。

 野生動物を見ること、出会うことは、楽しく感動的な瞬間でもあるのですが、それが獣害などにつながる場合、どう対応すべきなのか。安易に、生き物との共生を云うことについて、ランドスケープの視点から見ると問題山積だと私は思います。本当にこれは難しい問題です。彼ら彼女らの生息している場所、私たちの住む場所、ランドスケープとしてどうとらえ、考えるか…。答えは中々見つかりそうにはありません。

ニホンジカ