2011/07/19

『裸の島』の宿彌島

 三原市の佐木島鷺港のすぐ目の前に宿彌島という小さな無人島があります。この島は、新藤兼人監督による映画の撮影場所です。私の母方の曾祖父の田舎がこの佐木島にあり、神戸での小学校の1学期が終わると、この佐木島の家に来て、夏休みの1か月ほど、いつも過ごしていました。私にとってはのどかで楽しい夏の時期でした。

 この宿彌島について、子供の時の記憶をたどると、既に無人島だったことを思い出しました。かつて人が一人住まわれていたということから、「一人島」と呼ばれていたように教えてもらった記憶があります。当時、既に無人島ではありましたが、山羊が生息していました。この山羊は、宿彌島にかつて住んでいた人が飼育していた山羊です。一頭いたのを対岸から見て、覚えています。今では、もうその山羊もいなくなり、現在、釣りをする人が宿彌島へ船で渡るぐらいなのでしょう。

 映画での風景で出ていた佐木島も、もうだいぶ変わっているのですが、それでもこの宿彌島は、昔と同じように見えます。映画撮影には、私自身、まだ生まれてもいないのですが、それでも映画のモノクロームのその風景と今そこに見える風景の時間の変遷が、オーバーラップし、何とも言えず不思議でなりません。映画では、モノクロームであっても、夏の暑さや海の色の美しさが伝わってきました。その撮影された風景から、今の宿彌島を眺めてみた場合、映画とオーバーラップし、色彩がある現在から、モノクロームも見えてきそうな感じを受けていきます。それほど、この映画での映像の力がすごいのでしょう。


宿彌島
鷺港旧フェリー乗り場