2011/07/21

物の見たて

 庭の調査で姫路にある書写山圓教寺に行っていますが、その折に面白いものを見る機会と遭遇しました。境内の外れた辺りに、写真のようなお地蔵様が安置されていました。遠目では、赤い帽子と緑の涎掛けを掛けたかわいらしい『お地蔵様』でした。が、近づいていくと、それはお地蔵様ではありませんでした。単なる五輪塔だったのです。五輪の塔に赤い帽子と緑の涎掛けを着けてもらっているものだったのです。

 人の思い込みと単純なフォルムへの擦り込みの怖さ。これは、色々と考えさせられる一瞬でした。なぜ五輪塔がお地蔵様に思えてしまったのか。形、色、調度物、そういったものが重なって、五輪塔がお地蔵様に思えてしまったのでしょう。『見たて』の興味深い事例だと思いました。また、身の回りの景観として考えると、非常に人のそばにある景観要素だと認識しました。

 もう一つ、興味を持ったのは、この五輪塔に赤い帽子と緑の涎掛けを実際に着けてあげた方自身の物の『見たて』の素晴らしさです。こういった別物で、新たな意味を見出すこと、これは直感的に見いだせられたものかもしれません。もしくは単に、思い込んで新たなものとして創り出しているものかもしれません。

 人の認識とは、非常に浅いものでもあり、しかし、それを新たに認識する面白さもあり、その『見たて』によっては、変化するものになるのだと、認識させてもらった五輪塔のお地蔵様でした。景観の要素としても重要な点を示していると思います。

五輪塔のお地蔵様