2011/11/19

表参道の同潤館と切り取った空間

 表参道ヒルズの東の一角に、かつての同潤会アパートメントを再現した同潤館があります。かつてを忍ばしてくれる建築です。私が東京に住んでいたころは、まだこの場所に同潤会アパートメントがありました。既に壁面は、ぼろぼろの様相でしたが、住んでみたいと思ったこともありました。大学院の時に学んだ建築の先生から聞いた各同潤会アパートメントの置かれている現状と建築躯体そのものの現況など、いろいろな忠告を受けて、住むことはしませんでしたが、デザインのノスタルジックな風貌にあこがれて、つどつど見学に行っていました。その後、取り壊しとなり、現在の建築になっていますが、東橋の同潤館は、その時を思い出させてくれるよい建築だと思います。

 この同潤館の建築は、ただ単に再建しているのではなく、そこにかつてあった建築と空間を、時間ごと切り取ってくれているような気がします。切り取ったその建築には、現在、ナツヅタは壁面に這い出しており、時間の経過を楽しめるものになりつつあります。それはそれで、訪れるたびに時間を楽しめる空間を作り出してくれているような、そんな雰囲気を醸し出してくれているようです。

蔦と時間