2021/12/29

ノスリから農環境を考えてみる

 南丹町の農空間でノスリ(Buteo japonicus Temminck & Schlegel, 1844)を見かけました。農空間によく見る猛禽類です。京都府では純絶滅危惧種として指定を受けています。京都に赴任した頃,キャンパスに隣接している賀茂川でよく見かけましたが,最近はそういえばあまり見かけていません。ずんぐりとした体形ですが,小型哺乳類を捕食したりするので敏捷です。南丹の圃場では,採餌できる小型哺乳類もいるという事にもなりますね。

 近郊農村の環境は,私が農学の実学を学んでいた学部生の時や,院生で農村空間での調査を始めた頃に比べて大きく変化しています。20年前の事ですから,それはそれは,だいぶ変わってきています。二次的自然と言われる農環境は,生き物にとり,その環境に依存している種にとっては死活問題で,実際減少している種も多くいます。その点が大きくクローズアップされますので,多くの方々の目には,多様性が減少している,種が減っていると思うと思います。例えばメダカなどが挙げられますね。身近だったはずと思い込んでいたと思うのですが,実は徐々に生息環境が無くなってきていたのです。生息環境を戻せば元に戻るでしょうが,人の問題や経済の問題もありそう簡単には戻れないかもしれません。生き物が減ってしまうと云った一面が多くある反面,生息環境を広げている種もいたりして,生き物はしたたかに環境に順応したりしています。一概に数字で出すことが出来れば楽ですが,どうもそういったことは,生き物に充てはめること自体,難しいようです。

 このノスリは,猛禽類で「高次捕食者」です。いわゆる食物ピラミッドの上位種にあたります。ですので,その下位部にあたる採餌するための生き物の環境が担保されなければ,この子たちは生きていけません。鳥種を見ることで,その環境も少しは推し量ることができます。したがって,この南丹の農環境は,彼ら彼女らにとって良い環境だと言えることが推察されます。こういった農環境が続くことで多くの生き物の生息が維持されると考えると,何がよい環境で,悪い環境は何なのか,考えるきっかけを作ってくれます。


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