2013/09/15

神戸元町の海文堂書店

 いよいよ今月の30日に閉店しまう神戸を代表する書店。あまりこのブログでは書く内容として異色なのかなとも思いますが,どうしても書いておきたいなと思い書きます。

 神戸に生まれ育った神戸っ子にとって子供のころから親しんで,そこにあって当たり前の街の光景になっていた海文堂書店さんが,元町通のその場所からなくなってしまうことは,ほんとうに残念で仕方がありません。

 子供のころには,よく祖父に連れられて行きました。中学から高校の頃も元町に行けば寄っていた書店でした。大学生のころは地方大学だったとは言え,帰省の度に寄っていましたし,院で関西に戻ってからは,元町に下車して頻繁に行っていました。この書店は何かしら不思議な雰囲気を持っていました。近所には大型書店も確かにありますが,私にとって海文堂書店さんの書店の持つ雰囲気が好きだったのです。良い表現ではないかもしれませんが,大型書店特有の機械的な雰囲気が無いのが大好きだったのです。それに何と言っても,海事関係の書籍などが充実していることから,他店には無い独特な雰囲気があり,それを見るだけでも港街神戸へ戻ってきた,帰ってきたと強く思ったものです。特に,神戸を離れて他都市で住んでいたときには良く思ったものです。

 働き出して東京や博多に行ってからも,そういった落ち着ける書店に出会うことはほとんどありませんでした。ですので,帰省し,元町を歩くたびに寄ったものです。関西に戻ってから,神戸での仕事や実家に戻った時には,必ず寄ってしまう書店でした。私にとって元町の灯台のような役割をしてくれている書店だったのです。神戸で本を買う時はいつも海文堂書店で買っていました。

 私の研究分野ではない書籍が多かったのですが,親しんだ書店,神戸らしい書店の灯が今月で消えてしまうのは返す返す残念で仕方がありません。創業99年目で店を閉めるとの神戸新聞の記事で目にしたとき,信じられなかったのです。そこで,どうしても確認したく,お店まで見に行きました。

 いつものようにある海文堂書店の入り口。中に入ると,閉店のお知らせが書かれてありました。新聞の記事を信じたくなかったのですが,もしかすると小さくとも営業はしますとか書いてあるのではないだろうかとついつい思ってしまっていました。あたりまえですがそんなことはありませんでした。

 神戸らしいものがどんどんと無くなっているような気がしています。表面的な神戸らしさを目にすることが何とも多くなり,震災後それが顕著だなと思うことがあります。「神戸らしさ」は,「バタ臭さ」ということをよく祖父から聞いていましたが,それももう過去のものになっている気がします。神戸の街並みがどんどん変わり,ランドスケープの視点から考えても何が神戸らしいのか?が分からなくなってきています。港との繋がっている線が細くなっている気もしています。東京にいる時からそうでしたが,今住んでいる京都からでも,やはり地元の神戸がどうしても気になってしまうのです。

 身近なものの風景,あって当たり前だと思い込んでいた風景が無くなるのは,どう表現してよいのかわかりません。今月中にもう一度,訪れようと思っています。海文堂書店さん,今までお疲れさまでした。そして有難うございました。

神戸の海文堂書店さんです