2022/04/15

津和野の春の光景

 津和野は町の歴史が重層した光景がそこかしこに見られます。江戸から昭和へと続く時間の光景です。江戸のころからの城壁や通りや修繕された建築。明治期以降の建築や区割りなど,栗本格斎翁が描いた「津和野百景図」の幕末の空間がそこかしこに見てとれます。

 写真のような蒸気機関車が走っている状況は,懐かしさも併せて何とも良い光景です。汽笛の音も合わさってサウンドスケープが素晴らしく,その場で立って見ていたり,蒸気機関車にひかれる客車に乗って車窓を眺めても空間の楽しさがあります。ちょうど春の風景としての菜の花が咲いて,津和野川の鉄橋を蒸気機関車が煙をもうもうと出しながら走り,汽笛を鳴らしてくれているのは,視覚,聴覚,臭覚といった感覚を楽しめる空間を提供していると言えるでしょう。

 単にノスタルジック(nostalgic)な空間ではないのかという考えもあるでしょうが,人の記憶のノスタルジア(nostalgia)は,経験したことだけではなく,先達から聞いた話や書物からの情景などが重層化しての一部でもあり,形容しがたいものかもしれません。今回の津和野での光景は小学生の時,同じように蒸気機関車に乗せてもらった記憶とオーバーラップして,感慨深いものを感じました。

3月下旬の光景です